日本の大和言葉を美しく話す
高橋 こうじ
「相(あい)思い」
つい最近も、通学する小学生が「あの二人は絶対、両思いだよ」と話す
のを聞きました。四十年前、私たちが言っていたのとまったく同じように。
相思相愛を意味する「両思い」という言葉は、子どもの会話の世界で盤石
の地位を保っているようです。ただ「子どもの恋」の会話でさんざん使った、
そのイメージが強すぎるからか、私たちは大人になるとこの言葉を使いませ
ん。
では、代わりに何と言うか。四字熟語の「相思相愛」はやや硬いので、結
局、「あの二人は互いに好きだ」のような文の形で表現するしかありません。
つまり、子ども時代より語彙が減ってしまった、情けない状況です。
でも、実は大和言葉の世界にはぴったりの言葉があるのです。それが「相
思い」。互いを深く思う二人の心理を表す動詞が「相思う」で、その名詞形が
「相思い」です。恋愛だけでなく友情や仕事上の人間関係についても使える
言葉。意味といい「片思い」の対義語にふさわしいのに、なぜこれまで広く使
われずにいたのか不思議です。「相思いを目指します」といった形で使ってみ
てください。
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※先日、NHKの大河ドラマ「真田丸」を見たが、その台詞に呆れかえってし
まった。安っぽいお笑いのようであった。品格も重厚さも懊悩(おうのう)
も、まったく感じられなかった。もしこの番組が受け入れられているとした
ら、日本人が「子ども時代より語彙が減ってしまった、情けない状況です。」
という危機的な状況にある判断せざるを得ない。
平成28年1月21日 記
日本の大和言葉を美しく話す
高橋 こうじ
目上の人を相手に、できるだけ丁寧な敬語を使って話す中で、楽しい思いや、過去に楽しかった気持ちを表現したくなったら、どうしていますか。最近は、「楽しいです」や「楽しかったです」のような、形容詞に「です」を足す言い方も間違いではない、ということになっていますが、これは伝統的には誤りとされてきた言い方で、ぎごちなさは否めません。
せっかくそれまで丁寧な敬語で話してきたのだから、できることなら、より端正な表現を用いたいもの。かといって「楽しい」を漢語の名詞に置きかえて「愉快です」「極楽でした」などとすると、やや気張った感じの表現になってしまいます。
そんなときには、思い切って「ございます」を使いましょう。たとえば、目上の人と旅行をしたあと、それを振り返る会話では、「あの旅、本当に楽しゅうございました」と言うのです。「楽しゅう」は「楽しく」が変化した言い方。あとに「ございます」がつく場合に、必ずこの形になります。
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※今の言葉遣いを耳にすると、唖然としてしまう。「やばい」「見れる」「ちょう・・・」等々枚挙にいとまがない。この本を読んで、言葉の在り方を考えてもらいたい。人間関係間の根幹をなすものではないか、言葉は。
平成28年1月14日 記