能面紹介(翁系面)

           
              

     三番叟(さんばそう) 別名 黒式尉(こくしきじょう)
 能の演目は,1番から5番までに分類される。しかし,能「翁」が演じられる場合は,すべてに優先される。能「翁」は,農村の祭りの行事が次第に演劇化されたものであるとされ,神聖化されていて特別な祝いの折りに舞うことになっている。祝いの儀式といった感があり,天下太平五穀豊穣(ごこくほうじょう)を祈るものである。
 能「翁」では,翁の面(白式尉)を付けたシテが舞った後,黒式尉を付けた三番叟が,面白おかしい身振りで舞い終了する。ある説では,翁は地主をあらわし,三番叟は小作人を象徴したものとする。

  

    
           
            
           
          
 

          白式尉(はくしきじょう)
 翁の面は他の能面とその形式が異なっている。顎(あご)は,切り顎に なっていて上顎と下顎が離れている。また,『ぼうぼう眉』と称される眉毛もついている。それらの特徴は,能面以前の面からの 様式を受け継いでいるものである。能面のほとんどが霊的なものを表現しているのとは異なり,翁はめでたい神事をことほぐためのもので,上品な優しさを表現している。また,「へ」の字形にくり抜かれた眼にも,額(ひたい)から頬に かけての溝状(みぞじょう)の皺(しわ)にも,人生の苦楽をのみこんだ柔和(にゅうわ)な笑いが見られる。

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