能面紹介(特殊面)

             

                景清(かげきよ)
 平家の武将であった悪七兵衛平景清は、一門滅亡の後も生き延びてひそかに源頼朝を狙っていた。しかし、捕らえられ、源氏の栄える世は見たくないと自ら両目を抉り、日向の国に流されて乞食同然の暮らしを送っていた。能「景清」は、武将の輝かしい過去と無惨な現在が対比されている中で進行する。日向の国まで父景清を訪ねる娘(人丸)との再会と別離。心理ドラマの傑作とされている曲である。

                  

        

                 不動(ふどう
 不動明王の面である。右手に利剣を左手に羂索(けんさく)を持ち、悪魔降伏の威力をもっている。能の家では、この不動の面について「一枚面なり。泣不動・調伏曽我に用いる面なり。金剛に有り、また、宝生にも弘法の作の不動の面あるなり。」とあって、不動明王の登場する曲だけに用いる面だとする。
 金剛の不動の面については、昔、奈良のある寺が火災に遭ったとき下半身を焼失した不動尊の顔面を断ち割って、それを面に作り直したとの伝説がある。また、金剛氏正が、室町末期に奈良の寺で不動尊の木造を見て、その相貌の素晴らしさに魅せられ、面にして「調伏曽我」を舞ってみたいと思い立ち、夜陰に乗じて尊像を盗み取ったという伝説もある。