「砂の器」
松本清張
捜査本部が、バーの従業員や、当時居合わせた客、それに、バーの外ですれ違ったギター弾きなどを証人として事情を聞いたとき、全部が一致して言ったのは、被害者に東北弁の訛りがあったことである。
これは、被害者の割り出しに躍起となっている捜査本部に、一つの手がかりを与えた。
「東北弁というのは、どうしてわかりましたか?」
係官はきいた。
「年輩の客が話していたのは、たしかにズーズー弁でした。話の内容は、はっきりとわかりませんが、言葉の調子がそんな具合でした。若い方の言葉は標準語のようでしが」
話の内容がわからないことは、証人たちの全部が同じだった。
・・・・・・・・・・・。
「カメダは今も相変わらずでしょうね?」
被害者の連れは、被害者にそう東北訛りできいた、とバーの女給の一人が話した。
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※蒲田駅で殺人事件があり、聞き込みを実施すると、「カメダ」と東北訛りで話していたことが分かった。秋田県に「羽後亀田」という駅名があることをつきとめる。しかし現地に行っても何の手がかりも掴めなかった。国語研究所に出かけた刑事の今西は、そこで出雲の一部でズーズー弁が使われていることを教えられる。はたして地図を見ると「亀嵪」とあった。映画も傑作である。何回も何回も見ている。
平成27年4月13日 記