加藤諦三

      「アメリカインディアンの教え」
                        加藤諦三

  
 幼い頃に母親を信頼できなかった人は、成長しても他人を信頼できなくなりがちにもなるでしょう。信頼できなければ、自分を守るために戦ったり逆にむやみに迎合して自分を守ったりするのは当たり前です。
 自分を心理的に守る必要のない人が、はじめて他人に対して思いやりをもつ余裕が出てくるのです。
 私は,さまざまな人間関係のなかで親子関係は特に大切なものと考えています。それは,親子関係が,すべての人間関係のスタートになるからです。親子の間で満たされるべき感情が満たされた人は,友達ともうまくいき,恋人ともうまくいきます。そうして他人と協力する喜びを知ります。そのように親密になる力をもった人は,会社などでもうまくいくのです。
 親に十分愛されて育った人ならば,やたらに他人の注目を集めたがったりしないし,愛を神聖視して他人に「絶対の愛」を求めたりもしません。要するに,相手ができることしか相手に求めないのです。ですから皆から愛されるし,祝福された人生を送ることができるのです。
では,親から愛されなかった人はどうでしょうか。彼らは愛に飢えています。やたらと人に愛を要求します。しかしそれでは,他人から愛されるはずがありません。挙げ句の果てには,すぐにひがんだり,虚勢を張ったりと,ついつい他人に嫌われることになってしまいます。
「幼年時代が楽しいものであれは,その残照は一生涯消えないものであるし,その逆の場合は,苦い不快感が生涯を通じて後を曳くものである」とヒルティーは言っています。幼年時代の楽しさは生涯の財産だし,逆に幼年時代の悲しみは生涯の負債です。「 不幸な人は一生不幸であり続ける傾向にある」とは,こういうことなのでしょう。
母親は,幼児の身体的欲求を満たすだけではなく,心の安全を守る,とは多くの人の言うところです。母親が十分に役割を果たさなければ,子どもは健やかに成長することができません。・・・・・

アメリカインディアンの教え
作 ドロシー・ロー・ノルト    訳 吉永 宏

 子どもたちはこうして生きかたを学びます

批判ばかり受けて育った子は
非難ばかりします
敵意にみちた中で育った子は
だれとでも戦います
ひやかしを受けて育った子は
はにかみ屋になります
ねたみを受けて育った子は
いつも悪いことをしているよう な気持ちになります
心が寛大な人の中で育った子は
がまん強くなります
はげましを受けて育った子は
自信を持ちます
ほめられる中で育った子は
いつも感謝することを知ります
公明正大な中で育った子は
正義心を持ちます
思いやりの中で育った子は
信仰心を持ちます
人に認めてもらえる中で育った子は
自分を大事にします
仲間の愛の中で育った子は
世界に愛をみつけます
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※加藤諦三が、この詩を基にその感懐をのべている珠玉の作品である。
 全国的に子どもへの虐待が取り上げられて久しい。子どもは守られるべきものなのに、対極である。加藤諦三が書いているように、子どもの成長にとって家庭の愛情が基本である。「幼年時代が楽しいものであれは,その残照は一生涯消えないものであるし,その逆の場合は,苦い不快感が生涯を通じて後を曳くものである」とあるように、子ども時代の成長過程は、一生を左右するくらい大切なものである。このことを社会が大人たちが、しっかり認識する必要がある。
            平成27年5月21日 記