若山牧水

            若山 牧水

幾山河越えさりゆかば寂しさのはてなむ国ぞ今日も旅ゆく
今日も又心の鐘をうちならしうちならしつつあくがれてゆく
しらたまの歯にしみ透る秋の夜の酒は静かにのむべかりけり
白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ
うす紅に葉はいちはやく萌え出でて咲かむとすなり山桜花
さびしさのとけてながれてさかづきの酒となるころふりいでし雪
かんがへて飲みはじめたる一合の二合の酒の夏のゆふぐれ
渚ちかく白鳥群れて啼ける日の君が顔より寂しきはなし
なにゆゑに旅に出づるや、なにゆゑに旅に出づるや、何故に旅に
真昼日のひかりのなかに燃えさかる炎か哀しわが若さ燃ゆ
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※旅と酒とに身を馳せた若山牧水。「幾山河・・・」旅に出るときまってこの短歌が頭に浮かぶ。「しらたまの歯にしみ透る・・・」は飲酒の美学か、「かんがへて飲みはじめたる・・・」は飲酒の実体か、ともに酒飲みには心に迫る短歌だろう。心に深く刻み込まれる歌が多く、暗記しやすい。     
        平成29年12月18日 記