上杉謙信

   九月十三夜
  
     上杉謙信

霜は軍営に満ちて 秋気清し
数行の過雁(かがん) 月三更(さんこう)
越山 併せ得たり能州の景
遮莫(さもあらばあれ) 家郷 遠征を憶う

【口語訳】
 霜は軍営に満ちて、秋気が清清しい。雁が幾つかの列を成して飛び、月がこうこうと照らし時刻は真夜中の12時頃である。越中・越後に加えて、今度は能登まで自分の領土とした。それはそれとして、故郷に残してきた人々が、我々のことを思っているだろうか。そんなことはどうでもよいのだ
 
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※1577年(天正5年)上杉謙信が、七尾城を落としたときの作品だと言われている。
上杉謙信の漢詩は、この一作のため、誰かが代作をしたとか偽作だとする説も流布している。この詩は、頼山陽の『日本外史』に載せられて広く知られることになったという。
            平成27年4月12日 記