乃木希典

  金州城下の作
           乃木希典

山川草木 転(うたた)荒涼
十里風腥(なまぐさ)し 新戦場
征馬(せいば)前(すす)まず 人語らず
金州城外 斜陽に立つ

【口語訳】
 山も川も草も木も、ひたすら荒れ果てて見る影も無い。先日戦が行われたこの場所では、十里に渡って風が血なまぐさく感じられる。軍馬は進まず、将兵たちは押し黙っている。夕陽が傾く金州城外に、私はただ立ちつくす。
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 明治10年、西南戦争で苦戦、軍旗を奪われ、これが終生の恨事となる。明治37年、日露戦争では司令官として旅順攻略を指揮、この激戦で二子を亡くす。明治45年、天皇崩御により、妻静子とともに大喪の当日、自邸にて殉死(割腹)を遂げた。最後の殉死であった。このことは、司馬遼太郎が「殉死」で書いている。
 下記の短歌は、その時の辞世の句である
   「うつし世を神さりましゝ大君のみあとしたひて我はゆくなり」

                 平成27年4月13日 記