中庸   

         中庸

  人、一たびしてこれを能(よ)くすれば、己これを百たびす。

  【口語訳】
 他人が一回でできたことでも、私はなかなかできない。そうしたら、百回行ってできるようにする。

  --------------------------------------------------------------------
※人よりも何倍も努力することは、一つの人生の大切な見識である。結果をすぐに求められるような現代ではあるが、努力はけっして裏切らないであろう。地に足をつけた生活が重要である。この文言は、9月25日の水田先生剣道範士受称記念祝賀会の折りの挨拶に使用した。どのような言葉をどこに入れ込むかは、時として重要な課題となる。水田先生が、私に「この言葉に共感を覚える」とおっしゃったのは昨年のことである。決して聞き逃しはしなかった。「中庸」は、「四書」の一つ。
 「四書」・・・『大学』『中庸』『論語』『孟子』を総称したもの

               平成28年9月26日 記


         中庸

 道なる者ものは、須臾(しゅゆ)も離る可からざるなり。離る可きは道に非ざるなり。是の故に君子は其の睹(み)えざる所に戒慎(かいしん)し、其の聞こえざる所に恐懼(きょうく)す。隠れたるより見(あら)わるるは莫く、微(かす)かなるより顕(あきら)かなるは莫し。故に君子は其の独りを慎(つつし)むなり。

  【口語訳】
 道というものは、ちょっとの間も離れてはならないものである。もしちょっとでも離れてよいものならば、それは道というべきものではないのである。だから有徳の士は、人の見ていないところにおいても、自分の行いを戒め慎み、人の聞いていないところにおいても、恐れ慎む。

  --------------------------------------------------------------------
※道に志すということは、常住坐臥そのことを考えていることだという。さらに、『論語』に
「會子曰く、士は以て弘毅(こうき)ならざる可(べ)からず。任重くして道遠し。仁を以て己が任と為(な)す。亦(また)重からずや。死して後に已(や)む。亦遠からずや。」とあるように、死ぬまで続くということだろう。なんと険しい道のりか。
              平成28年6月2日 記