富安風生(とみやすふうせい)

            富安風生

     滴りの打ちては揺るる葉一枚
     蔦の葉に働く汗をふりこぼす
     まさをなる空よりしだれ桜かな
     よろこべばしきりに落つる木の実かな
     麦架けて那須野ケ原の一軒家
     勝負せずして七十九年老の春
     いやなこといやで通して老の春
     山道の掃いてあり多(た)る初詣
     霧さむし深山(みやま)燕の鋭(と)き谺(こだま)
     みちのおくの伊達の郡(こおり)の春田かな
     古稀という春風にをる齢(よわい)かな
     生くることやうやう楽し老の春
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※「ホトトギス」派の代表的な歌人。奇を衒(てら)わず 、正統派としての矜持(きょうじ)をもち俳句を作り続けた。俳句と実生活との融合が、多くの人々に影響を与えた。「古稀という春風にをる齢かな」「いやなこといやで通して老の春」「生くることやうやう楽し老の春」など、訴えてくる俳句数知れず。地域や色々なしがらみに縛られて、嫌と言えない自分がいる。かく生きたいものだ。
        令和元年10月30日 記