種田山頭火

        種田山頭火

ついてくる犬よおまへも宿なしか
あすはかへらうさくらちるちってくる
あたたかい白い飯が在る
あの雲がおとした雨にぬれている
あるけばキンポウゲ座ればキンポウゲ
あるけばかつこういそげばかつこう
いさましくもかなしくも白い函
いそいでもどるカナカナカナ
いつも一人で赤とんぼ
うどん供へて母よわたくしもいただきまする
うれしいこともかなしいことも草しげる
うしろすがたのしぐれてゆくか
からだぽりぽり掻いて旅人
けふはここまでの草鞋をぬぐ
こころすなほに御飯がふいた
こんなにうまい水があふれてゐる
さてどちらへ行かう風がふく
だまつて今日のわらじ履く
どうしようもない私が歩いてゐる
どこからともなく雲が出て来て秋の雲
ぬれててふてふどこへゆく
ほととぎすあすはあの山こえて行かう
また逢へた山茶花も咲いてゐる
また見ることもない山が遠ざかる
まっすぐな道でさみしい
わがままきままな旅の雨にはぬれてゆく
わかれてきた道がまつすぐ
分け入つても分け入つても青い山
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※山頭火は有季定型にとらわれず、自由律俳句で思いを自由に表現した。私は有季定型を良しとするが、彼の作品は別格である。読めば読むほど心惹かれる俳句だ。山頭火を愛する者が多いのも理解できる。
         平成30年11月18日 記