将(まさ)に東遊せんとして壁に題す
月性(げっしょう)
男児 志を立てて郷関を出づ
学若(も)し成る無くんば死すとも還(かえ)らず
骨を埋(うず)めるに 豈(あに)墳墓の地を期せんや
人間(じんかん)到る処(ところ)青山(せいざん)あり
【口語訳】
ひとたび男子たるもの志を立てて郷里を出たからには、学業が成るまでは絶対に帰らない決心である。骨を埋めるにどうして故郷の墓地に執着しようか。広い世間には、どこへ行っても骨を埋める青々とした墓地があるではないか。
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※「志を得ざれば再び此の地を踏まず」と故郷を出るとき実家の柱に彫ったのは、野口英世である。まさに、この漢詩と重なっていく。「人間到る処青山あり」の結句のような生き様の人も多くいるだろう。松尾芭蕉は江戸に出て10年が経って故郷に帰るとき、「秋十(と)とせ却(かえ)って江戸を指故郷」と俳句を作っている。あれほど、故郷に帰りたいと願っていたのに、いざ故郷を目指す段に自分の故郷は江戸になっていたことを俳句にしたものである。一方、石川啄木が「かにかくに渋民村は恋しかり思ひ出の山思ひ出の川
」と詠うように、故郷とはいつまでも心に刻まれたものであることも事実である。
令和3年12月20日 記