住宅顕信(すみたくけんしん)

         住宅顕信

    気の抜けたサイダーが僕の人生
    一日の終わり一日の始まりの検温
    こわした身体で夏を生きる
    薬が生涯の友となるのか今朝の薬
    看護婦らの声光りあう朝の廻診
    ずぶぬれて犬ころ
    あさり、うっかり閉じ忘れた口をとじる
    月、静かに氷枕の氷がくずれる
    かあちゃんが言えて母のない子よ
    淋しさは夜の電話の黒い光沢
    許されたシャワーが朝の虹となる
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※住宅顕信は、急性骨髄性白血病で25歳の若さで亡くなった。残した俳句は、自由律俳句であり、その数はわずかである。限られた命の灯火を、俳句に託した。不安な気持ちが垣間見える。
        平成28年5月6日 記