史記

           「史記」
                       司馬遷

   四時の序、功を成す者は去る。

【口語訳】
 春夏秋冬がめぐっているように、それぞれの役割を終えたら、次に譲って主役は去るべきである。
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※秦の国の宰相范雎(はんしょ)は、絶頂期にこの言葉を引用されて引退を勧告される。その返答は、「善し。吾聞く、欲して止まるを知らざれば、その欲する所以を失い有して足を知らざれば、その有する所以を失う、と。先生、幸いに雎(しょ)に教う。敬(つつ)しんで命を受けん。」であったという。賢明な生き方である。権力の座にいつまでもしがみついて、晩節を汚す者がいる。後継に託すことも忘れてはならない。
        平成29年6月30日 記



           「史記」
                       司馬遷

    一貴一賤(いっせん)、交情すなわち見(あら)わる。

  【口語訳】
 人間の付き合いが、貴賤(きせん)の変化につれて顕著に現れる。
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※上げ潮の時は人の出入りも盛んだが、一度落ち目になるとぱったりと途絶えてしまう。そのような人間世界の有様を皮肉った言葉である。このことは、芥川龍之介の「杜子春」の中にも描かれている。どのような状況下にあっても変わらぬ交情を保てないなら、所縁を放下(ほうげ)したほうがよい。
           平成28年7月27日 記



           「史記」
                       司馬遷

桃李(とうり)言わざれども下(した)自(おのずか)ら蹊(みち)を成す。

  【口語訳】
 桃や李(すもも)の下には、美しい花が咲いたり美味しい実がなったりする。そうすると自然に人が集まってくる。(それと同じように徳のある人物のもとには、黙っていても人々が慕い寄ってくるものである。)
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※美味しいものに人が集まるように、徳のある人物のもとには黙っていても人が寄ってくる。徳のない人や自己中心的な人からは、自然に去っていく。それもまた自然の摂理である。まさに名言である。
           平成28年7月25日 記



           「史記」
                       司馬遷

   燕雀(えんじゃく)いずくんぞ鴻鵠(こうこく)の志を知らんや。

 【口語訳】
 ツバメやスズメのような小さい鳥は、大きな鳥の考えていることはわからない。
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※微視的に物事を見ている人は、つまらないことを言うものである。このように考えると少しは救われる。そして、心の安寧につながる。
          平成28年5月27日 記



           「史記」
                   司馬遷
 
 孔子、相(しょう)の事を攝(せっ)して,曰く“臣、聞く。文事有る者は必ず武備有り。武事有る者は必ず文備有りと。古(いにしへ)は諸侯、疆(さかい)を出づるに,必ず官を具へ以て從はしむ。請ふ左右の司馬(しば)を具(そな)へん。”と。定公曰く“諾(だく)”と。左右の司馬を具ふ。

【口語訳】
 孔子は会見の補佐を行うように任命されたので,こう進言した“私はこのように聞いております。文事ある者には必ず武の備えを有する,武事ある者は必す文の備えを有すると。昔の諸侯は国境を出る際,必す文武の官を備えて從はせました。左右の武官(司馬)を備えてください。”定公は答えた“わかった”こうして左右の司馬を同行した。
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※「文事有る者は必ず武備有り。武事有る者は必ず文備有り。」まさに、至言だ。一方に偏ってはいけない。特に剣道など武道は荒々しく相手を傷つけやすい。だから「礼に始まり礼に終わる」と相手を尊重することを教える。そこに、武道は成り立つ。知性のかけらもない武道は、単なる暴力に過ぎない。
          平成28年5月21日 記



           「史記」
                       司馬遷

断じて敢行すれば鬼神(きじん)も之を避く

【口語訳】
 固い決意をもって断行すれば、何ものもそれを妨げることはできない。
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※座右の銘である。しかし、人間は弱いものだから常に挫けそうになる。その時は、この言葉を思い出し、自分の心に鞭打つことにしている。目標が達成できないことは恥ずかしいことではない、諦めることが恥ずかしいのである。
         平成27年2月11日 記