礼記(らいき)

          「礼記
   
 父の讎(あだ)は与(とも)に共(とも)に天を戴(いただ)かず、兄弟(けいてい)の讎は兵に反(かえ)らず、交遊の讎は国を同じうせず。

【口語訳】
 父の仇とともに同じ天をいただくことはできない、したがって同じ世に生かしてはおけず、必ず殺すべきである。兄弟のかたきは家に帰ってから武器をとってくるなどのひまはない、いつでも武器をたずさえていて直ちに殺すべきである。友人のかたきは国を同じくして住むことはできない、やはり殺すべきである。
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※この言葉から、「不倶戴天(ふぐたいてん)」の熟語が生まれた。逆に考えれば、同じ思想信条の人とは「天を戴くこと」になる。しかし、相手を抹殺する考えではいつまでも負の連鎖は断ち切れない。どこで折り合いをつけていくのかが難しい。
          平成28年8月19日 記



          「礼記

 敖(おご)りは長ずべからず、欲は従(ほしいまま)にすべからず。

【口語訳】
 自分の能力や地位を鼻にかけて人を見下すのはよくない。欲望の追求もすべきではない。
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※人を見下し服従させても、面従腹背の人をつくるだけである。相手の年齢や経験値、生き様を尊重してこそ良好な人間関係が構築できる。力のない人がある地位につくと、自分自身が偉くなったように勘違いして高圧的に振る舞うことがある。そのような人には誰も付いていこうとはしないはずだ。
          平成28年8月13日 記



          「礼記

 玉琢(たまみが)かざれば器(うつわ)を成さず、人学ばざれば道を知らず。

【口語訳】
 玉は磨いてこそ、価値あるものになる。人間も学んでこそ、人間のあるべき道を知ることことができる。
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※人として生まれてきたからには、錬磨し自らを高めなければ価値がない。それは、学歴や経済的な豊かさを追求しろということではない。「人としてのあるべき道」のことだ。『礼記』は、儒教の経書で五経(ごきょう)の一つ。おもに礼の倫理的意義について解説した古説を集めたものである。
  五経・・・「易経(えききょう)」「詩経(しきょう)」
       「書経(しょきょう)」「春秋(しんじゅう)」「礼記」
          平成28年5月24日 記



          「礼記

 学びて然(しか)る後に足らざるを知り、教えて然る後に困(くる)しむを知る

【口語訳】
 学ぶことによって自分に欠けているところが分かり、教えることによって自分の未熟なところが分かる。
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※学び教えることによって、さらに確かなものになる。知っていることと教えることは、違うのである。学んだことを十分咀嚼(そしゃく)しなければ、教えることはできない。『論語』に「子曰く、由、女(なんじ)に之を知るを誨(おし)へんか。之を知るを之を知ると爲(な)し知らざるを知らずと爲せ。是れ知るなり。」とあるように、知るということは、区別を明確にすることである。忸怩(じくじ)たるものがある。
          平成28年5月23日 記