半夜(はんや)
良寛
首(こうべ)を回(めぐ)らせば五十有余年
人間(じんかん)の是非は一夢の中
山房五月黄梅の雨
半夜蕭蕭として虚窓(こそう)に灑(そそ)ぐ
【口語訳】
振り返ってみるといつの間にか50年あまりも経ってしまった。人の世の良いこと悪いこと、色々な出来事はまるで夢のようだ。この山の静かな草庵に五月雨が降っている。真夜中にふと気がつくと、この五月雨が音寂しく人気のない窓辺に降り注いでいる。
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※江戸時代の平均寿命は、30歳くらいの時もあったそうである。これは、乳児死亡率が高かったことが要因である。もちろん、かなり高齢まで生きた人もいる。平均寿命が50歳を越えるのは、1947年である。そのことを考えると良寛の50有余年というのは、今の感覚とは違い人生の最晩年である。その回顧の情と夜の雨の寂しさが、見事にとけあった漢詩である。
平成27年4月29日 記