王安石(おうあんせき)    

    
   「夜 直」
                 王安石

金炉香(こう)尽きて漏声(ろうせい)残る
剪剪(せんせん)たる軽風(けいふう)陣陣として寒し
春色(しゅんしょく)人を悩ませて眠りを得ず
月移って花影(かえい)欄干(らんかん)に上る

【口語訳】
いつのまにか金の香炉から立ち上っていた香煙も尽き、水時計の音だけがかすかに聞こえてくる。春の夜風とはいっても、しきりに寒さを感じさせる。春の気配は人を悩ませ、なかなか眠りにつけない。やがて月も移り、いつのまにか花の影が欄干に上っている。
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※王安石は、北宋の政治家・詩人・文章家。細やかな情景の観察と表現、優雅で繊細な人柄が感じられる。
          平成27年1月16日 記