能面の見方

         
      「十六中将(じゅうろくちゅうじょう)」
 『平家物語』の「敦盛最期」に描かれているのが、平敦盛である。熊谷次郎直実に首を落とされ、その短い生涯を終えることになる。持っていた「青葉の笛」から笛の名手敦盛と判明する。16歳、既に結婚し子どももいた。このように『平家物語』などの作品から多くの謡曲が作られた。
          平成27年10月24日 記                 



          
    「大癋見(おおべしみ)」   「長霊癋見(ちょうれいべしみ)
 「べしむ」とは、 口を一文字に閉じて踏ん張ることである。通常、能面は口が開いているが、この「癋見」は閉じられている。
           平成27年10月22日 記                 



          
            「顰(しかみ)」
 顰めるとは、上下の歯で物を噛んだ状態のことを表す。能面「顰」は、顔の全ての筋肉を硬直させた凄まじい形相である。そのため、左右の目や耳がかなりずれている。顔を顰めることを「しかめっ面」と言うが、がこのことからきているとする説もある。
          平成27年10月21日 記                 



       
     小飛出(ことびで)    天神(てんじん)
 頭を見ると毛髪と間違う墨で塗られた部分がある。これは、烏帽子(えぼし)である。
    烏帽子とは
 日本の伝統的な男性用かぶりものの一種。烏色 (くろいろ) のかぶりものの意味で,中国唐代 (7世紀) の烏沙 (うしゃ) 帽に由来。天武 12 (683) 年にかぶりものに関する官制がしかれ,その際に圭冠ができたが,これが変化して烏帽子となり,平安時代以降,身分に関係なく日常的に着用された。
         「 ブリタニカ国際大百科事典」より
          平成27年10月20日 記                 



            
                翁(おきな)
 「翁」の面は、口の延長した下顎の部分で切り離した切り顎になっている。これは舞楽の仮面の影響を受けている。動いたり言葉を発した時、カタカタと音が出て、その音は、神に伝わるという。円満な福相をしている相貌は、祝言を述べるに相応しい。
 また、「翁」のように植毛したものがある。この素材は、馬の鬣(たてがみ)や尻尾である。白馬のそれを使うので、植毛してから古色液等で染色をして、落ち着かせている。
          平成27年10月19日 記                 



         
        「景清(かげきよ)」   「小面(こおもて)」
 「景清」は、源氏の世の中は見たくないと、自ら両目を抉(えぐ)って盲目となる。その目は、横に幅広く切られている。一方、「小面」は、約9㎜の少し捻れた四角に切られている。よって、「景清」の面は視角が広くよく見え、「小面」は視野が狭く舞台の4本の柱がなければ、落ちてしまうほどだ。盲目の人の面ほどよく見え、健常者の面ほど見えないという相反する現象がおきてくる。
         平成27年10月18日 記                 



         
      「小面(こおもて)」    「顰(しかみ)」 
 人間の場合は、目を墨で描く。神や怨霊などの場合は、目に金属を嵌め込んだり歯を金泥で彩色したりする。なお、銅の目型は、鍍金したり金箔を貼ったりする。真鍮で作る場合もある。
          平成27年10月16日 記                 



           
  「小牛尉(こうしじょう)」  「三光尉」(さんこうじょう) 
 「尉」とは、老人のこと。「小牛尉」は位の高い老人であり、「三光尉」は市井の老人のことである。「小牛尉」は上歯だけだが、「三光尉」には上下歯がある。つまり上下の歯があるということは、身分が高くないことを示している。
          平成27年10月15日 記                 



    
「小面(こおもて)」  「増女」(ぞうおんな)  「深井(ふかい)」
 この並びは年齢順、「小面」は15歳くらい、「増女」は20代、「深井」は30代くらいになる。平安時代の平均寿命が34、35歳であることを考えると妥当である。現代とは、色々な意味で違っていて、15歳くらいで子どもを産み育て、30歳頃には、その子どもが成人するという順番になっていた。『平家物語』で有名な「敦盛最期」の敦盛も、その時16歳、既に結婚をして子どももいた。

        女面は、どのように鑑賞するか。
 まず違いは、表情である。口角が上がっていたり、反対に下がっていたりする。若い女性は、当然上がっている。次の違いは毛描きである。よく見ると本数に差があったり、交差したりしている。この毛描きが、能面を作る上で最も難しい工程である。さらに、高齢の女性ほど目が丸く切ってある。四角に切ると、パッチリ見えるためだ。
           平成27年10月14日 記                 



      
 「生成」(なまなり)      「般若」  「真蛇(しんじゃ)」
 この三面は、一連のものである。「生成」は「般若」になる以前の面であり、それより怒りや怨念を一層強く表現したのが「真蛇」である。「般若」には耳があり舌がない、「真蛇」は耳がなく赤い舌がのぞく、より動物的である。
         平成27年10月13日 記