野口 雨情

 「証城寺の狸囃子」
              野口雨情

  証 証 証城寺
  証城寺の庭は
  ツ ツ 月夜だ
  みんな出て 来い来い来い
  己等(おいら)の友達ア
  ぽんぽこぽんのぽん

  負けるな 負けるな
  和尚さんに負けるな
  来い 来い 来い 来い来い来い
  みんな出て 来い来い来い

  証 証 証城寺
  証城寺の萩は
  ツ ツ 月夜に花盛り
  己等 (おいら)は浮かれて
  ぽんぽこぽんのぽん
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※愉快な詩で、その様子が映像のようにイメージできる。作者の心の広がりが容易に想像できる。
          平成27年10月13日 記 



      「波浮の港」
               野口雨情

  磯の鵜の鳥ゃ 日暮れにゃ帰る
  波浮の港にゃ 夕焼け小焼け
  明日の日和は
  ヤレホンニサ 凪るやら

  船もせかれりゃ 出船の仕度
  島の娘たちゃ 御神火ぐらし
  なじょな心で
  ヤレホンニサ いるのやら

  島で暮らすにゃ 乏しゅうてならぬ
  伊豆の伊東とは 郵便だより
  下田港とは
  ヤレホンニサ 風だより

  風は潮風 御神火おろし
  島の娘たちゃ 出船の時にゃ
  船のとも綱
  ヤレホンニサ 泣いて解く
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※ 野口雨情の作詞に、中山晋平が曲を付け大ヒットした。哀愁を誘うそのメロディーは、日本人の心を揺さぶる。今、歌がヒットしないのは、曲もさることながら詩が心に迫らないからだろう。野口雨情は、茨城が生んだ大詩人だ。
         平成27年9月26日 記 



      「しゃぼん玉」
            野口 雨情

  しゃぼん玉 飛んだ
  屋根まで飛んだ
  屋根まで飛んで
  こわれて消えた

  しゃぼん玉 消えた
  飛ばずに消えた
  生まれてすぐに
  こわれて消えた

  風 風 吹くな
  しゃぼん玉 飛ばそ
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※ 「雨情は明治41年3月、ひろ夫人との間に長女をもうけるが、生後わずか7日で亡くなった。この『しゃぼん玉』は亡くなった子どもへの鎮魂歌と言われているといわれているが、定かではない。しかし、生まれてすぐにこわれて消えた・・・をそう感じるのは歌う人の心だろうか。」と解説にある。悲しい歌だ。
 小林一茶も子どもを次々に亡くす。そして、作られたのが下記の俳句だ。子どもに死なれた思いはいかばかりか。
  はつ袷(あわせ)憎まれ盛りに早くなれ
  這え笑え二つになるぞけさからは
  露の世は露の世ながらさりながら
  もう一度せめて目を開け雑煮膳 
         平成27年9月24日 記