中村 草田男
降る雪や明治は遠くなりにけり
この日雪一教師をも包み降る
萬緑(ばんりょく)の中や吾子(あこ)の歯生え初むる
冬の水一枝(いっし)の影も欺かず
勇気こそ地の塩なれや梅真白
葡萄食ふ一語一語の如くにて
校塔(こうとう)に鳩多き日や卒業す
ハマナスや今も沖には未来あり
町空のつばくらめのみ新しや
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※ 中村草田男の人間生命賛歌は、どのような場合にも自然を離れることはなかった。しかし、それは自然そのものの再現ではなく、形而上的(けいじじょうてき)なものに高められた。「降る雪や・・・」「萬緑の中や・・・」「冬の水・・・」など、人口に膾炙(かいしゃ)する句が多い。
先日、1歳4ヶ月の孫が家に来たが、まさに「萬緑の中や・・・」であった。活動的でついていくのにやっとであるが、頼もしさも感じている。
令和2年6月29日 記