中村汀女(なかむらていじょ)

        中村汀女

   咳の子のなぞなぞあそびきりもなや
   あはれ子の夜寒の床の引けば寄る
   引いてやる子の手のぬくき朧かな
   泣いてゆく向ふに母や春の風
   みちのくの子の寒がりよ春時雨
   ねんねこに母子温くしや夕落葉
   竹馬を今はかつぎて母のもと
   目をとぢて秋の夜汽車はすれちがふ
   秋入日しばらく染めし寺座敷
   外(と)にも出よふるるばかりに春の月  
   年ごろの似てかえりみて曼珠沙華(まんじゅしゃげ)  
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※中村汀女の俳句には、女性らしい優しさで子どもを見詰めたものが多い。我が家の長男にも第1子(私にとって2人目の孫)が4月8日に誕生して、現在帰省している。赤ちゃんを見ていると、汀女の句が思い浮かぶ。
 ところで、日本の出生数は年々下落し、1973年(昭和48年)の2,091,983人が2019年(令和元年)には864,000人になってしまっている。人口減少にさらに拍車がかかるだろう。そんな中、保育園が開園できないとのニュースが流れたことがある。近隣住民が子どもの声がうるさく迷惑だという理由だった。子どもの声を騒音だと言ってしまっては、事ここに極まれりという印象だ。自分たちも子ども時代があったはずだ。子どもの声が聞こえてこそ、平和な時代の営みではないか。子どもは、国の宝である。子殺し、虐待、育児放棄、さらには保育園の開園反対運動等、子ども受難の時代である。中村汀女のような心情で、子どもを愛育してほしいものだ。
 生命誕生から35億年、命が命をつないで我々が今ここにある。その営みを忘れてはいけない。
         令和2年4月28日  記