隅田川
永井荷風
黄昏転(うた)た覚ゆ薄寒の加わるを
酒を載せて又過ぐ江上の家
十里の珠簾(しゅれん)二分の月
一湾の春水 満堤の花
【口語訳】
黄昏時の隅田川沿いを歩いていると、なんとなく薄ら寒くなってきた。酒を携えてまた川沿いの家々の前を歩いていく十里の堤沿いに玉の簾が揺れる。空には満月がかかっている。入江には春の水が満ち、堤沿いには桜が咲き乱れている。
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※永井荷風は、晩年、浅草近辺に出没していたという。自由奔放な人生であった。
平成28年1月31日 記