松瀬青々(まつせせいせい)

           松瀬青々

   元日や目出度顔なる貧乏人
   葛菓子をひさぐ吉野の雪解(ゆきげ)哉
   しろき蝶野路にふかるゝ薄暑(はくしょ)哉
   あつあつの大根の上の味噌の色
   夕立は貧しき町を洗い去る
   雨雲のよせつゝ凄き火串かな
   日盛りに蝶のふれ合ふ音すなり
   怖ろしきことをはじめし絵踏かな
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※昨年の11月、五島列島を訪れた際、堂崎教会で「踏み絵」を見た。歴史で学習はしていたが、目の前にしたのは初めてであった。それは、幾多の人に踏まれたのか摩滅していた。多くの人の悲しみや辛さを受けとめたのであろう。人間とは、どうして愚かなことを繰り返していくのだろうか。「怖ろしきことをはじめし絵踏かな」の俳句を読み、そのことが蘇ってきた。松瀬青々は、関西アララギ派の重鎮であった。
           平成27年12月13日 記