夏目漱石の伊豫(いよ)に之(ゆ)くを送る
正岡子規
去(ゆ)けよ 三千里
君を送れば 暮寒生ず
空中に 大嶽(たいがく)懸(かか)り
海末(かいまつ)に 長瀾(ちょうらん)起こる
僻地は 交遊少(まれ)に
狡兒(こうじ)の 教化は難(かた)し
淸明には 再會を期(き)せん
後(おく)るる莫(なか)れ 晩花の殘るうちに
【口語訳】
さあ、出かけなさい、遠い四国の松山へ。元気づけて君を見送れば淋しさが襲い、夕暮れの寒さが身にしみる。東海道を下れば空高く霊峰富士を仰ぎ見ることができ、また瀬戸内の大波も見ることができるであろう。僻地での君には心おきなくつき合える友が少なく、その上いたずらな生徒の教育はさぞ難しいに違いない。君とは清明の頃に是非ともお逢いしたい。せめて遅咲きの春の花が散りうせぬうちに。
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※正岡子規に「行く我にとどまる汝(なれ)に秋二つ」という俳句があるが、まさにそのような心境を詠った漢詩である。 この二人の交遊はつとに有名である。
平成27年3月31日 記