小嶋登

   旅立ちの日に
             小嶋登

白い光りの中に 山なみは萌(も)えて
遥かな空の果てまでも 君は飛び立つ
限りなく青い空に 心ふるわせ
自由を駆ける鳥よ ふり返ることもせず
勇気を翼にこめて 希望の風にのり
このひろい大空に 夢をたくして

懐かしい友の声 ふとよみがえる
意味もないいさかいに 泣いたあのとき
心かよったうれしさに 抱き合った日よ
みんなすぎたけれど 思いで強く抱いて
勇気を翼に込めて 希望の風にのり
このひろい大空に 夢をたくして

いま 別れのとき
飛び立とう 未来信じて
弾む若い力信じて
このひろい
このひろい 大空に

いま 別れのとき
飛び立とう 未来信じて
弾む若い力信じて
このひろい
このひろい 大空に       
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※この歌は、全国の多くの小中学校の卒業式で歌われている。作者小嶋登は、秩父市立影森中学校長の時にこの歌を作った。荒れた中学校を「歌声の響く学校」にするために尽力し、その集大成として世界に一つしかないものを卒業生に送るという思いが、この歌を作らせた。そして、卒業式に教職員が歌い、それを契機に全国に広がっていく。中学校に勤務した小嶋だからこそ、このような詞を紡ぎ出せたのであろう。生徒の未来を信じ、限りない可能性を応援していこうとする慈愛の光を感ずる。一つ一つの言葉の重みが違う。作曲は、音楽科の教師である坂本浩美が担当した。短時間に作曲したと聞く。前奏や間奏のメロディーが情感豊かで、巣立っていく生徒たちの心を高揚させる。見事に詞と曲が共鳴している。つまらない芸能人が、この曲をアレンジして歌っているが、作為的なものを感じ心に響かない。やはり、この歌は、そのままで歌い継いでいくのがよい。
 ある時、旅館で多くの大学生と一緒になったことがあったが、彼らが湯船の中でこの「旅立ちの日に」を大きな声で歌っているのを聞いて、とても嬉しいような誇らしいような気持ちになった。年齢や学校は違っても、卒業式の感動を共有できた瞬間であった。心も体も温かくなった思い出である。
                 平成27年3月25日 記