川上徹太郎

       「日本のアウトサイダー」 
                  川上徹太郎

 つまり萩原氏は、精神的にも、或る程度実生活の上でも、前衛的であろうとした。気質からよりも、わが社会的・文化的な遅れがそれを命じるのである。そしてその結果は、自ら目指した思想や、装ったポーズの空しさを知った。だから自ら犯人であり、同時に探偵であるというような二重性のアレゴリーが生まれるのだ。大正という時代は、精神文化の面にはこの種の喜劇が波立っている。例えば生来クラッシックな優雅に浸ることに汲々たる傾向の人が思わず新奇な衣装で現れて人を驚かしたりする。当人何も計画的な芝居を打ったのではないのだ。だから彼が後で気がついて驚くことは、自分の考えてやった創意と、それが齋した効果の食い違いである。しかもそういう時大正っ児というものは、ほくそ笑むよりも、てれたものだ。
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※この作品は、中原中也、萩原朔太郎、岩野泡鳴、河上肇、岡倉天心、内村鑑三など、インサイダーの思想に対してアウトサイダーの思想を展開した人たちの、その人となりと考え方を披瀝したものである。誰しも、アウトサイダー的な考え方に一時期傾倒する時期がある。それは、若き日の特権かもしれない。
                平成27年4月27日 記