加賀千代女(かがのちよじょ)

       加賀千代女

  朝顔につるべ取られてもらい水
  墨染で初日うかがふ柳かな
  わかみづや流るるうちに去年(こぞ)ことし
  うつくしい夢見直すや花の春
  来たといふまでも胡蝶の余寒(よさむ)かな
  よき事の目にもあまるや花の春
  手折(たお)らるる人に薫るや梅の花
  水ぬるむ小川の岸やさざれ蟹
  花の香にうしろ見せてや更衣(ころもがえ)
  音なしに風もしのぶや軒あやめ
  ぬれ色の笠は若葉の雫にて
  風さけて入口涼し菖蒲哉
  しばらくは風のちからや今年竹
  山のすそ野の裾むすぶ清水かな
  釣竿の糸にさはるや夏の月
  秋たつや寺から染て高燈籠
  京へ出て目にたつ雲や初時雨
  似た事の三つ四つはなし小六月
  月も見て我はこの世をかしく哉
  髪を結う手の隙あけて炬燵かな
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※加賀千代女は、1703年(元禄16)加賀の国(現在の石川県白山市)に生まれる。優しさに溢れた女性的な句が多い。特に「朝顔につるべ取られてもらい水」が有名である。
        平成28年5月5日 記