和泉 式部
もろともに苔の下には朽ちずしてうづもれぬ名を見るぞ悲しき
とどめおきて誰をあはれと思ふらむ子はまさるらむ子はまさりけり
暗きより暗き道にぞ入りぬべきはるかに照らせ山の端の月
わがこころ夏の野辺にもあらなくにしげくも恋のなりまさるかな
あらざらんこの世のほかの思ひ出にいまひとたびの逢ふこともがな
背子が来て臥しし傍寒き夜は わが手枕をわれぞして寝る
君恋ふる心は千々に砕くれど一つも失せぬものにぞありける
けふも又かくや伊吹のさしもぐささらば我のみもえや渡らん
黒髪の乱れも知らず打伏せば先づ掻き遣りし人ぞ恋しき
けふも又かくや伊吹のさしもぐささらば我のみもえや渡らん
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※和泉式部は、情熱的な恋多い女性であった。その一つが、敦道親王との恋を描いた「和泉式部日記」に書かれてある。一方、藤原道長の娘、中宮彰子に仕え、その才能を遺憾なく発揮した。小式部内侍は、娘である。早すぎる小式部内侍の死(26歳くらい)は、大きな衝撃を与え
「とどめおきて誰をあはれと思ふらむ子はまさるらむ子はまさりけり」と詠んだ。これは、哀傷歌の傑作として知られている。また、
「もろともに苔の下には朽ちずしてうづもれぬ名を見るぞ悲しき」も、その悲しさを表している 。
平成29年7月21日 記