「花朝(かちょう)澱江(でんこう)を下る」
藤井竹外
桃花(とうか)水暖かにして輕舟を送る
背指(はいし)す孤鴻(ここう)没せんと欲(す)るの頭(ほとり)
雪は白し比良山(ひらさん)の一角
春風猶(なお)未だ江州(ごうしゅう)に到らず
【口語訳】
桃の花咲く頃に、水も温んで我が乗る船を、勢いよく押し流してくれる。 後を振りむくと、今しも一羽の水鳥が天空の彼方に消え去ろうとするのが見えた。ちょうどその辺に比良山が高く聳え、その一角には残雪が白く輝いている。さて、こちらの温暖に似ず、江州にはまだ春風が訪れていないらしい。
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※頼山陽に学んだ幕末の詩人。七言絶句に優れ「絶句竹外」と称された。梁川星厳や広瀬淡窓とも交際があった。暖かな春の訪れは、人の心をも解かしていく。その心の動きが垣間見える作品である。
平成27年2月1日 記