服部南郭(はっとりなんかく) 

   
夜(よる)墨水を下る
       服部南郭
金龍山畔(さんぱん)江月(こうげつ)浮かぶ
江揺らぎ月湧いて 金龍流る
扁舟(へんしゅう)住(とど)まらず 天水の如し
兩岸の秋風 二州を下る

【口語訳】
 金龍山のほとり隅田川に月影が浮かんでいる。水の流れにつれて月光のくだけ散るさまは、ちょうど江中に月が湧いて金色の龍が流れてゆくようである。私の乗る小舟は流れて止まることもなく、天と水が一つになったような美しい眺めの中を進み、武蔵と下総(しもふさ)の境のあたりを両岸の秋風におくられて下ってゆくのである。
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※自然に身を任せ、己を空しくして楽しむ姿が感じられる。
 服部南郭は、江戸中期の儒学者。荻生徂徠(おぎゅうそらい)に師事し、後に塾を開いて子弟の教育に当たった。舟を浮かべて遊ぶことを好み、風流儒雅の道を開いた人といわれている。
          平成29年9月27日 記