山部赤人
山部宿禰(すくね)赤人が不盡山(ふじさん)を望める歌一首 「万葉集」
天地(あめつち)の 分かれし 時ゆ 神さびて 高く貴き
駿河なる 布士(ふじ)の高嶺を 天の原 振り放(さ)け見れば
渡る日の 影も隠(かく)らひ 照る月の 光も見えず
白雲も い行きはばかり 時じくそ 雪は降りける
語り継ぎ 言ひ継ぎ行かむ 不盡(ふじ)の高嶺は
反歌
田子の浦ゆうち出て見れば真白にそ不盡の高嶺に雪は零(ふ)りける
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※新年号「令和」の制定により、『万葉集』が俄然注目を浴びるようになった。この歌も、それに掲載されてある。山部赤人は、叙景歌(じょけいか)に優れ絵画的な作品を多く残した。この富士山を詠んだ歌は、教科書に取り上げられるなど特に有名である。当時は「富士山」という記載は確定していなかったため、「布士」「不盡」「不二」などの表記が確認できる。これは、音や訓を利用した万葉仮名による表記のためである。
ところで、富士山の由来であるが、『竹取物語』では次のように記している。月の都に帰っていく際かぐや姫からもらった「不死の薬」を、帝が大勢の士(さむらい)を連れて焼かせるため山に登った。その山を「士に富む山、富士山」というようになったと。また、別の本では、「不死の薬」を焼いたので「不死の山、ふじ山」としている。
『竹取物語』・・・910以前に成立した日本最古の物語
「万葉仮名」 (デジタル大辞泉より)
漢字の表す意味とは関係なく、漢字の音や訓をかりて国語の音を表記するのに用いた漢字。万葉集に多く用いられているので、この名がある。字音によるものとして、阿米(アメ・天)・久尓(クニ・国)・許己呂(ココロ・心)、訓によるものとして、名津蚊為(ナツカシ)・八間跡(ヤマト)・夏樫(ナツカシ)・牡鹿(シカ・助動詞)・喚雞(ツツ・助詞)などの類。
平成31年4月16日 記