「一剣天に倚(よ)つて寒し」
楠正成が湊川で足利尊氏の大軍を迎えようとしたとき、兵庫のある禅院に
きて、
「生死交謝の時如何」(人の生死の岐路に立った時はいかにしたらいいでし
ょうか)と和尚に尋ねると、
「両頭倶(とも)に截断すれば、一剣天に倚つて寒し」
(お前の二元論を断ち切れ。一本の剣だけを静かに天に向かって立たせよ)
と和尚が答えた。両頭とは2つの考え・価値観のこと。生死や善悪などの価
値観に捕らわれていれば迷いが生まれるので、両頭(2つの価値観)を倶に
截断して一剣(自分の気持ち)に従い進むことが、天に倚つて寒し(天の理に
従う正しい道)だと諭された。
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※事に臨んで、自分を信じ迷わないことが肝要だ。何事もかくありたいものだ。その楠木正成を、再び世に出したのが、水戸黄門で有名な徳川光圀だ。光圀の家来が1692(元禄5)年、大日本史を編纂中、水田の中にあった小さな塚を見付けた。光圀は、正成の偉業を称え“嗚呼忠臣楠子之墓”と自書した墓碑を建立した。
平成27年9月11日 記