刀の小物の収集

  ベニスの水田道場のマオリッツさん(サンマルコ広場のお店に勤務)は、二つの鍔をもっていた。私が鍔を収集しているのを聞きつけ、二つの鍔を見てくれと言ってきた。一つは、鉄地の鍛え鍔で象嵌が施されていたが、もう一つは鋳物だと判断して、その根拠を説明した。鉄のあじ、錆の具合、櫃(ひつ)の出来具合、責金(せきがね)の傷などから判断して話した。やはりヨーロッパの人なので、理詰めで言ったら、納得したようだった。イタリアの人だから、日本のものに知識がないだろうなど考えたら、大きな間違いだ。よく研究し勉強もしている。私が鋳物だとする理由についても、すべて知っていて理解できた。日本の伝統や文化などと軽々に発言するが、うわべだけの理解ではもはや通用しない。世界に伍(ご)していくためには、確かな知識と経験が不可欠だ。
        平成30年10月10日 記 


      
          表              裏

 丸形鉄地、卍透かし鍔。月と雲が高彫りで二カ所にほどこされている。
        平成28年12月5日 記 


      
          表              裏

 丸形鉄地、壺・瓢箪透かし鍔。透かし鍔は、図柄を透かすものと地を透かす(図柄を残す)ものとに分かれる。鉄のあじがしっとりとしていて、時代を感じさせる。責金(表の中心穴)が仕込まれてある。
        平成28年12月4日 記 


      
          表               裏

 長丸形鉄地、梅の古木と花が鉄地から掘り出されてあり、その枝に掛けられた釣瓶(つるべ)が、銀、銅、真鍮で象嵌されている。また、古木から延びた枝についた花と蕾も象嵌である。裏は、下部に岩と笹を配置し空間の美を演出している。小振りなので脇差し用の鍔だと考えられる。日本刀は、下記のように区別する。
   刀・・・・刀身が2尺以上
   脇差し・・刀身が1尺以上2尺未満
   短刀・・・刀身が1尺未満
       平成28年11月26日 記 


      
          表               裏

 7年前に購入。丸形鉄地で菊が掘り出され、銅、赤銅の象嵌がある。一部金箔で装飾されている。覆輪がある。覆輪とは、補強や装飾を目的に金属で鍔の周りを縁取りしたもので、この鍔の場合は同じ素材で作られている共覆輪(ともふくりん)である。鍔には通常三つの孔がある。表の写真でみると、向かって右が笄櫃(こうがいひつ)、中が中心穴(なかごあな)、左が小柄櫃(こづかひつ)、となる。笄櫃とは、武士の髪の乱れなどを直す笄を差し込む穴のこと。小柄櫃とは、小柄を入れる穴のこと。笄櫃が赤銅で埋められている。
       平成28年11月23日 記 


      
          表             裏

 8年前に購入。木瓜(もっこう)形鉄地で鐙(あぶみ)が真鍮高彫り象嵌(ぞうがん)でほどこされている。本来、表には鐙の象嵌が二つあったが、残念ながら一つ欠損している。 
       平成28年11月22日 記 


      
          表             裏

 4年前に笠間の骨董市で購入した鍔。丸形鉄地で蝶、仙翁(せんのう)、葵、杜若が金、銀、赤銅の高彫り象嵌(ぞうがん)でほどこされていて、鉄のあじが実にいい。責金(せきがね)が付いているので使用品である。居合いで使用した場合は、指の当たるところが色落ちするので、それではない。責金とは、鍔を固定させ刀身との隙間を少なくするために用いた銅製の金具のことを指す。見えにくいが、鍔の中心穴(なかごあな)の上下に付いている。 
       平成28年11月21日 記 


     
          表               裏
 
 三十数年前に東京で購入した。木瓜(もっこう)形鉄地で、ススキ、キキョウ、オミナエシ、コオロギ、カマキリの象嵌が金、銀、銅、真鍮で設えてある。写真向かって左が表(にぎやか)、右が裏(地味)となっている。基本的に鉄地で象嵌のあるものを好んでいる。 
       平成28年11月20日 記 


        
          表            裏
 
 平成27年1月4日、笠間の骨董市で刀の鍔(ほぼ完品)を購入した。以前から欲しかった平安城象嵌(へいあんじょうぞうがん)鍔で、現在、居合いに使用する日本刀に付けている。この鍔は、別名、平安城真鍮(しんちゅう)象嵌鍔とも呼ばれる。平安城鍔は足利六代将軍義教(よしのり)の好みで作られたものだと伝えられ、平安城透鍔(すかしつば)と平安城象嵌鍔に分かれる。平安城象嵌鍔は、通常丸形の鉄地に牡丹、南天、唐草、梅などの真鍮象嵌が全面的に施されている。地肌よりも僅かに高く盛り上がっていて、平象嵌(ひらぞうがん)や布目象嵌(ぬのめぞうがん)とは違っている。鉄地を彫り込んでおいて、それに文様を嵌(は)め込んでいく据文(すえもん)方式の工法で作られていて、鉄地と全面の真鍮象嵌(唐草と梅花)が平安城象嵌鍔の特徴をよく表している。戦国時代から江戸初期の頃に作成されたものと考えられる。
 真鍮は、応仁の頃に明の貿易品として我が国に輸入された新しい金属であり、当時は金に次ぐ高価なものであった。銅と亜鉛の合金で、日本で最初に国産化に成功したのは1593年の豊臣政権時代だった。
            平成28年11月17日 記 


                
             頭(左)     縁(右)

 日本刀の柄に使う「縁頭(ふちがしら)」。数年前、笠間の骨董市で購入した。牡丹と蝶が象嵌(ぞうがん)で作られている。「縁頭」の地は、魚子(ななこ)である。この魚子は出来がよく、かなり技量の高い職人が作ったものだろう。いずれは、これを使って柄を作り、現在の刀に取り付けるつもりである。

    「日本刀用語の解説」より
  「魚子」
 金属面に魚卵状に連続して鏨(たがね)をうちつけ生じたもの。凹入のある魚子鏨を用い金属面に打ちこむと魚卵状に凸起が出来る。魚子の技法は古く白鳳(はくほう)時代からある。鐔(つば)に限らず小柄(こづか)、笄(こうがい)、縁頭などの装剣具にも多く魚子地(ななこじ)のものがあり、地紋としての役割がある。魚子を専門に彫った魚子師がいた。七子、魚肉子とも書く。
  「象 嵌」 
 地金(じがね)に鏨(たがね)で切込みをつけ、それに異なった金属を嵌(は)め込むこと(象眼とも)をいう。色彩、装飾の効果を高める。高肉象嵌、平(ひら)象嵌、線象嵌、布目(ぬのめ)象嵌、七宝象嵌、梨地(なしじ)象嵌などの種類がある。
           平成27年2月23日 記