貞山公(伊達政宗)遺訓

   貞山公遺訓

仁に過ぐれば弱くなる。 
義に過ぐれば固くなる。
禮に過ぐれば諂(へつらい)となる。 
智に過ぐれば嘘をつく。
信に過ぐれば損をする。
氣長く心穏かにして、萬(よろず)に儉約を用て金銭を備ふべし。
儉約の仕方は不自由を忍ぶにあり。
此の世に客に來たと思へば何の苦もなし。
朝夕の食事うまからずともほめて食ふべし。
元來客の身なれば好嫌は申されまじ。
今日の行をおくり、子孫兄弟によく挨拶をして、娑婆の御暇申すがよし。

【口語訳】
人のためを思う気持ちが強ければ自分が弱くなる。
正しくあろうとする気持ちが強すぎれば考えが固くなる。
人を尊重しようとする気持ちが強ければ媚になる。
利口なだけでは嘘吐きになる。
人を信じるばかりではだまされて損をする。
穏やかな気持ちで倹約し、蓄えをすることだ。
倹約とは、自分が不自由であることを我慢することである。
自分は、この世に来た客と考えれば辛いこともない。
食べ物がまずくても褒めて食え。客なんだから好き嫌いを言うな。
過ぎ行く一日を大切にし、身内の者たちに感謝の挨拶をして、この世に別れを告げるのがよい。
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※希代の傑物は自分の哲学をしっかりもっていた。何事も世に名を残す人は違う。
         平成29年12月30日 記